新年の計

                     
財団法人郷学研修所・安岡正篤記念館
                                  理事長 安岡正泰

 新年明けましておめでとうございます。
 ここ何年か大変残念に思っていることは、「郷学・郷研」という言葉の真意がなかなか理解されていないことだ。
 日本農士学校設立趣旨をもう一度読み直してみよう。
「(前略)国家の明日、人民の永福を考える人々は、是非とも活眼を地方農村に放って此処に信仰あり、哲学あり、詩情あって、而して鋤鍬(すきくわ)を手にしつつ毅然として中央を睥睨(へいげい)し、周章(あわて)ず、騒がず、身を修め、家を斉(ととの)え、余力あらば先ずその町村からして小独立国家に仕立てあげていこうという土豪や篤農や郷先生を造っていかねばならぬ。是れ新自治(面白く言えば新封建)主義とも謂うべき真の日本振興策である。(後略)」
 さらに昭和49年「郷研通信」第1号に「郷研の意義」として次のように述べられている。
「郷学とは抽象的一般的主知的な学問ではなく、郷土・郷国(日本)の歴史・人物・文化に基づいて、現代世紀末文明の公害破滅からわが民族と国土とを救う為の学問である。公害研究の専門大家の結論は、志ある人々の自覚と精神の結果に待つ外ないということである。人間学の結論は、最高の教育を受けた人間も、その後の自己陶冶を無くしては立派な人間になれない。各人の自己陶冶によってのみ大業も成し得る。研は砥石(といし)にかけて磨きをかけること。郷研は人間と国家を救うのが使命である。」
 すでに昭和初期には地方自治のあり方、さらに昭和40年代には公害問題が指摘されているが、今日の厳しい時代であればあるほど私達は日本農士学校・郷学研修所設立の原点にかえって闊達な郷研活動に励まねばならないであろう。