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この正月も賀客相手に一夜さは、物騒な話はやめにして、せめて酔談に世を忘れたいと、年の暮から忘年の歌書など座辺に集めて置いた。
佐久良 東雄
「これをしてかれをしをへてかくしてと歳の首(はじめ)はたのしかりけり」
幕末の有名な歌人で、愛国の歌が多いが、この歌はまことによく人情の正を表現し得て共鳴する。
貝原 益軒
「来しかたは一夜ばかりのここちして八十ぢあまりの夢を見しかな」
岡野 直七郎
「すめくにの年のはじめの祈りには貧しき人に耻あらしめな」
岡山県赤磐の産で、前田夕暮や尾上柴舟に学び、大正から昭和に活躍した人である。歌はこれ一首しか知らない。あれこれ思えば思う程恥多いが、老来ただ一誠字を知ることが出来た。
伊勢 貞丈
「心だに誠の道にたがひなば祈ればとても神は守らじ」
世の人々に痛切である。
良寛和尚
「わびぬれど我が庵なればかへるなり心やすきを思出にして」
わが庵をわが国としてもよい。祖国としてもよい。この頃資本の外国逃避を企てたり、ハワイあたりに家を持つ人があるときくが、今の日本は確かにわびしいことが多いけれども、やっぱり我国を逃げるのは誠でない。
尾山 篤二郎
「事しあらば火にも水にも入りぬべし明日はな思ひそ後は後のこと」
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