9. 第一等の人物


 明末の哲人呂新吾に呻吟語があり、心ある人々の教養の書として愛読されている。
 「深沈厚重は是れ第一等の資質。磊落豪雄は是れ第二等の資質。聡明才弁は是れ第三等の資質。」
 どっしりと深く沈潜し、厚み、重みがあるのは、人間として第一等の資質である。大きな石がごろごろしているように線が太く、物にこだわらず器量の大きいのが第二等、頭がよく才が有り、弁が立つというのは第三等の資質であるというのである。
 大抵はこの順序を逆に考えて、聡明才弁が一番偉くて、深沈厚重をまるで鈍物のように思う。が、それは世俗のことで、本当はここに言われる通りである。聡明才弁の人は、とかく鋭角的になり過ぎる。従って磊落豪雄になれるように修養しなければならないが、そうするとどうも人間に氣負いが生ずる。だから深沈厚重の徳を養うことを第一にしなければならない。この徳を養うて始めて本当の磊落豪雄にもなるわけで、そうでないと似せ豪傑のようになってしまうと言っている。人間学の典型的な名論である。(活学第三編)